地球交響曲

地球交響曲という映画がある。今、第五弾まで出ているらしいのだが、結構コアなファンがいたりして、良い映画らしい。そんな話を昔、耳に挟んだことがあった。そしたら、なんとラピュタ阿佐ヶ谷という映画館で全部まとめて上映中、との事だったので、この機会に見てみよう、と思って見に行ってきた。
最近のレビューを見てもらえればわかると思うけど、"本当にあった話"、もしくはそれに多少脚色を加えた、という枠組みの映画を僕はあまり高く評価しない。それは、"もうすでに感動できる"事が内在的に明らかになっているような素材を扱っているように思うからだろう。でも、それはそれとして、ドキュメンタリーの価値を認めていないわけではない。事実は小説より奇なり、とは良く言ったもので、現実に起こる事というのは、時として、深い感動を僕らに呼び起こしてくれる。それを丹念に伝えてくれる、というのはそれだけで価値の深いものだ。ただ、僕の中でそれは映画ではない、というだけの話なのだと思う。(とはいっても、戦場のアリアとかは立派に映画だと思う。結局、判断基準なんてうまく説明できないのだけれども。)
前置きが長くなったけど、その地球交響曲は、そのドキュメンタリー的な部分を期待して見にいった。でも…正直なところ期待外れ。コンセプトとしては生命の大事さを伝えるということ。人間の可能性を伝えるということ。そして、ガイア仮説を持ち出し、環境を守る大切さを説くということ。らしい。最初に、この映画が作られた時期(1990年代初頭)という時代を考えれば同情すべきところもあるだろう。おそらく、その時代は環境保護を唱えれば先進的であるとみなされた時代だろうから。でも少なくとも今の時代に合うものではないと思う。例えば、途中で出てきた、"このままでは人間は地球という生命を殺してしまう"(正確ではないけれど、こういう趣旨だった。)という呼びかけはどちらかといえば傲慢ととるべき種類のものだろう。特定の宗教を礼賛する、という立場ではないのだろうが、実際にはアニミズム的なところに軸足をおいて主張が展開され、説得力を逆に薄めているように思う。
無論、見るべき点も無いわけではない。次から次へと出てくる映像は美しいものが多いし、登場する人物はそれぞれ、一時代を築いた人だ。でも、映像だけなら、NHK特集のそれの方が余計な主張がない分、純粋に感動できるし、一時代を築いた人の言うことに必ずしも共感できるわけでもない。宗教を超えて感動できる、普遍的であるなどというが、映像を編集し、神秘性をことさらに強調して唐突な美辞麗句を並べることで、人を動かそうという意思があるのならば、それは立派な宗教だろう。
とかとか、色々書いたけれど、帰る途中で大学のサークルの後輩にあって、一緒に飲みながら色々な話を聞けたので満足です。